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研究内容

私たちの宇宙は、どのように始まり、どう進化し、どのように終わるのでしょうか?この根源的な問題に対する答えは未だに見つかっていません。私たちは、宇宙論、重力理論、超弦理論、天体物理学、計算科学、量子情報科学などを駆使し、宇宙観測や実験データなどと照らし合わせながら、この根源的な問題を解決しようとしています。

​研究テーマ

宇宙論

宇宙の始まりには,インフレーション期とよばれる加速膨張の時代があり,現在の宇宙の大域的構造を決定し,さらに宇宙の大規模構造はインフレーション期の量子揺らぎによって生み出されるというシナリオが標準模型となっています。Ia型超新星や大規模構造等の観測により,現在の宇宙は新たな第2の加速膨張の時代にあることもわかっています。下の図は、そのような宇宙進化を模式的に表現した図です。宇宙の加速膨張の起源,暗黒物質の起源は何か。宇宙の構造の起源は本当にインフレーション期の時空の量子ゆらぎなのか。観測的宇宙論を通した宇宙模型と重力理論の検証、曲がった時空上の場の量子論や量子情報科学を応用した宇宙と重力に関する物理の根源的な問題について研究を進めています。

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量子情報科学と宇宙・重力

量子もつれを利用して量子状態を伝達する量子テレポーテーションが衛星を用いた地球規模の実験で成功するなど、量子情報科学分野は、次世代の量子通信や量子計算への応用を目指して急速に発展しています。この分野の急速な発展は、ブラックホールの情報喪失パラドクスや量子開放系のダイナミクスといった理論物理学の原理的問題に対しても非常に大きな影響を与えています。実は、重力が量子力学に従うのかどうかまだ誰も検証していませんが、量子もつれを使うと検証が可能になるかもしれません。ノーベル物理学賞を受賞したファインマンは、1957年に重力の量子性を検証するための思考実験を提案しました。これまで単なる思考実験でしたが、最近の量子制御技術の発展は、それを量子重力のテーブルトップ実験として可能にしつつあります。この問題は、宇宙論にも重要です。重力場は、一般相対性論では空間の歪みなので、重力が量子力学に従うならば、空間の歪みの量子力学的な重ね合わせ状態ができることになります。量子もつれは、量子相互作用によってのみ生まれるので、重力相互作用によってもし量子もつれが発生することを検出すれば、重力が量子力学に従うことが検証できるのです。そんな可能性を理論的に研究しています。

曲がった時空上の場の量子論

インフレーション期に量子揺らぎは引き伸ばされて,宇宙の構造の起源や原始重力波を作り出すと考えられていますが、この他にも真空の量子揺らぎは 多様な物理現象を予言します。例えば,加速運動する観測者から真空状態を見ると,加速度に比例する温度で熱的励起した状態に見えるという理論予言はウンルー効果とよばれています。この予言は、ブラックホールの蒸発を予言するホーキング放射と対応関係があります。これらの予言は、真空が時空の部分的領域に構成される量子状態の量子もつれ状態として記述されるという真空の持つ非局所相関と深く結びついているので,その構造や検証可能性を調べています。

宇宙の加速膨張の起源

アインシュタインが導入した宇宙項は,現在の加速膨張宇宙を説明する標準模型となっていますが、究極理論である超弦理論からは,負の圧力を持つダイナミカルなエネルギー成分であるスカラー場が起源である可能性が示唆されています。加速膨張を引き起こすこのようなエネルギー成分が観測可能な宇宙のスケールより大きなスケールで空間的に非一様な新しい理論模型の観測的帰結を調べ、加速膨張宇宙の起源を探求しています。

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